皆さんは生活の中で「血糖値」を気にすることはありますか?血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことを指します。
血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの分泌が少ないもしくは働きが悪いと、血糖値が急上昇・急降下を繰り返し、病気になることもあります。
基本的には食事によって血糖値は上昇や下降をするのですが、実はストレスによっても血糖値が急上昇してしまうことを知っていますか?今回はそのメカニズムと、ストレスを和らげる食べ物をご紹介します。
○血糖値が上がることによって引き起こされる病気
血糖値が上がることによって引き起こされる病気である糖尿病とその合併症についてご紹介します。
糖尿病は、血糖値を下げるホルモンのインスリンの作用不足によって起こる病気です。遺伝的要素や、食生活や運動不足などの生活習慣が原因となって引き起こされます。
すい臓がほとんどインスリンを作ることができない「1型糖尿病」と、インスリンの分泌が十分でないもしくは分泌されても充分作用しない「2型糖尿病」の2つに分類されます。10人に9人は2型糖尿病と診断され、40歳を過ぎてから診断されることが多い病気です。
もし糖尿病と診断された場合には、食事療法や運動などの生活習慣の改善やインスリン投与などの薬物療法などを合わせて治療していきます。
現在では「糖質オフ」や「ロカボ」などの言葉によって多くの人が知っているかと思いますが、糖は甘いものだけではなくパンやお米など日本人が主食としてよく食べるものにも多く含まれています。
そのため血糖値コントロールは3食の糖質量に気を使う必要があるため、それがストレスになってしまいうつ病を発症することもあるようです。
参考:日本イーライリリー「知りたい!糖尿病」
糖尿病ネットワーク「糖尿病とストレス うつとの関連、QOLの障害」
うつ病を併発することがあるように、糖尿病は他の病気を併発してしまうことがあります。糖尿病の合併症についてご紹介します。
合併症①:動脈硬化
動脈硬化は糖尿病の合併症のひとつです。血管の内側にコレステロールなどが付着することによって血管が狭くなり、血流が悪くなることを指します。
脳の血流が悪くなると「脳梗塞」、心臓の場合は「心筋梗塞」、腎臓の場合は「腎不全」など、死に至るような怖い病気を引き起こします。糖尿病だけが原因ではなく、高血圧や肥満、喫煙も動脈硬化の原因になるので普段から注意することが必要です。
合併症②:感染症
高血糖により免疫機能が低下するので、高血糖でない人よりも感染症にかかりやすくなります。インフルエンザや風邪などにはより注意が必要です。
合併症③:その他の病気
糖尿病は生活習慣が原因になることも多いため、同じように生活習慣が原因になって発症する歯周病や高血圧、脂質異常症などを併発することもあります。
○ストレスによって血糖値が急上昇するメカニズム
基本的には血糖値は食事によって血糖値が上昇、その後時間が経つにつれてゆっくりと下降をします。高脂質や糖質の多いものを食べると血糖値が急上昇してしまう傾向があり、1日の中で乱高下のない食事内容が理想的とされています。
血糖値が高い方はある程度食事内容によって食後の血糖値の急上昇を防ぎ、改善することができるということですね。
しかし上記で触れたように、ストレスが原因となって血糖値が上がってしまうこともあります。そのメカニズムは、大きく分けて2つあります。
メカニズム①:ストレスによって血糖値を上げるホルモンが分泌される
ストレスによって分泌されるホルモンによって血糖値が上がってしまうのが1つ目の原因です。該当するホルモンを3つご紹介します。
・コルチゾール…別名「ストレスホルモン」とも呼ばれていますが、血圧を高めて朝からの活動をサポートしたり、脂質やタンパク質をエネルギーに変換するなど体にとって必要なホルモンです。
しかしストレスによって大量に分泌されるとホルモンバランスが崩れ、過剰に血糖値を上昇させてしまいます。
・アドレナリン…アドレナリンはストレスや命の危険を感じたときに、血圧を上げ、糖を体の隅々までいきわたらせることで身を守るためのホルモンです。狩猟時代、緊急時に優位に戦ったり敵から逃げるために分泌されたとも言われています。
今は命の危険にさらされることは少なくなりました。そのためストレスが適度であれば自分の活動をサポートしてくれる味方になりますが、ストレス過多だと分泌過多となり結果的に血糖値の上昇を引き起こします。
・グルカゴン…血糖値を下げるインスリンとは逆の、血糖値を上げる働きをします。高血糖も問題ですが、低血糖も良くないので血糖を上げる働きのあるグルカゴンも大切なホルモンです。ただ、ストレスによって過剰に分泌されると血糖値のコントロールが難しくなってしまいます。
メカニズム②:ストレスによってインスリン抵抗性が強くなる
インスリン抵抗性とは、インスリンが分泌されても正常に働かなくなった状態を指します。血糖値を下げるホルモンはインスリンのみなので、インスリンが正常に働かなくなると当然血糖値が下がりにくくなります。
上記でもご紹介した、ストレスによって多く分泌されるアドレナリンはインスリン抵抗性を高める作用もあるので高血糖につながります。
○血糖値が高めの方におすすめのストレス解消法
ストレスによって血糖値をこれ以上上げないためにできる解消法をまとめました。
解消法①:気分転換する(環境を変える)
ただでさえストレスの多い現代なのに、血糖値のことを考えるとさらに気が滅入りますよね。そんな時には気分転換をするのがおすすめです。
もしストレスの原因が分かっていればその原因を取り除くことはできなくても距離を置いたり、普段行ったことのないところへ出かけてみることで気分転換ができると思います。
旅行などで少し遠くに行くのが最もいいかと思いますが、忙しい方はそんな時間をとれない方も多いかと思います。そんな時は、家の近所でも歩いたことのない道を通ってみたり、気になっていたけれども入ったことのないお店に入ってみることで新鮮な気持ちになれますよ。
解消法②:休息
休息は、しているつもりでもできていないことが多いように思います。例えば休息の代表ともいえるような睡眠ですが、ストレスがあったり眠る環境が整っていないことで、朝起きたときにも疲れが取れた感じがしない…ということはありませんか?
また、1日の中でまったく何もせずにぼーっとしている時間はあまりとれていない方が多いのではないでしょうか。スマートフォンの操作や、考えごとなどは意識的にストップしないと脳は常に活動している状態となり、休めません。
おすすめなのが電車の中でぼーっとすることです。最初が肝心で、電車に乗るとすぐにスマートフォンを取り出してしまいがちですがあえて出しません。そうすると景色を眺めるしかすることがなくなるので、なんとなく手持ち無沙汰になります。
そうすると今度は見えるものか頭の中に意識が向くようになります。ストレスの原因になっていることがあるとすぐに頭の中に浮かんでくるはずなので、そうなったらもう一人の自分が制止するイメージで「また考えてしまっている、やめよう」と制止してみてください。
以上のことをしてみると10分でも20分でも脳が休む時間をつくることができ、ストレスの解消につながるかと思います。
解消法③:運動
適度な運動は、健康に生きていくためにもストレス解消にも役立ちます。少し汗をかくと夜もぐっすり眠れますし、食事もより一層おいしく感じますよね。血糖値の高い方にとっても、もちろん運動は良い効果をもたらします。
すでにお伝えしたように血糖値は食後に上がります。まだ被験者は少ないものの立命館大学の研究では、食事の15分後にウォーキングとランニングの中間くらいの強度の運動を15分ほど続けると血糖値の急上昇が抑えられるとの結果も出ています。
ただ、食後すぐの運動は体調の悪い時には悪化させてしまう可能性もあるので十分注意して行ってくださいね。
参考:TANQ「食後の血糖値は運動で下がる。でもどれくらいの運動が最適なの?」
解消法④:食事を楽しむ
糖尿病と診断された場合、食事内容の見直しが必要になります。さらに毎回の食事後に自分で血糖値を測る場合もあるので、その数値によって一喜一憂するなどストレスになってしまう方もいるようです。
そのため、血糖値をコントロールしながらも食事を楽しむ工夫が必要です。たとえば、テーブルコーディネートや盛り付けをきれいにすることで目からも満足感を得るのはいかがでしょうか。
今はインスタグラムなどでコーディネートを紹介されている方もいますし、100均でそろうアイテムで食卓がとても華やかになります。季節に合わせたセッティングをしても楽しいかと思います。親しい人と楽しみながら食事をすると食べるのも自然とゆっくりになり血糖値の急上昇も防ぎやすくなります。
また、近年健康志向が高まっていることによって低糖質の商品はたくさん発売されています。生菓子も糖質オフのものがスーパーで手ごろな値段で売られていますし、低糖質のブランパンも普通の食パンと変わらずおいしく食べられるものが多いです。
低糖質の商品でおすすめなのが雪印の「ミルキーソフト」です。糖質がかなり少ないものの、優しい甘さで本当にミルキーを食べているようなおいしさです。値段もスーパーだと200円以下で買えるのでブランパンと合わせて食べてみてください。
参考:雪印メグミルク ミルキーソフト
○ストレスを和らげる食べ物5つ
ストレスは食べ物によって和らげることもできます。おすすめの食べ物を4つご紹介します。
①バナナ
バナナはどの季節でも比較的安価に手に入れることができ、皮をむくだけで食べられるのでよく購入する方も多いのではないでしょうか。実はバナナはストレスを和らげる栄養素がたくさん含まれている食べ物です。
代表的なものとしては、精神を安定させる作用のある「セロトニン」の原料の「トリプトファンを多く含んでいます。また、多く含まれるマグネシウムも抗うつの効果があります。
トリプトファンとは、ヒトの健康維持にとって欠かせ無い物質であり、かつ、ヒトの体内では十分量が合成出来無い「必須アミノ酸」の1つです。
体内で作ることができませんので、食品やサプリで摂取するしかないのですね。
朝に食事がとれないときやおやつ代わりの食べ物として、手軽にとってみてはいかがでしょうか。ドリンクやスイーツなどアレンジもたくさんできるので好きな食べ方を見つけてみてくださいね。ただ糖分は高めの食べ物なので、食べすぎには注意が必要です。
②ナッツ
ナッツは油が含まれているので太りやすい食べ物だと思っている方もいるかもしれません。しかしナッツに含まれる油は良質なものなのでストレスを和らげるためにも、ぜひ積極的にとりたい食品です。
特にクルミは、バナナと同じく「トリプトファン」を多く含んでいるのでおすすめです。そのまま食べてもおいしいですし、焼き菓子のトッピングとして使ったりおひたしに砕いて乗せるなど、おやつにも食事にも利用できて万能な食材です。
スーパーに行くと、カシューナッツやクルミ、アーモンドなどがミックスされた「ミックスナッツ」が売っています。塩分をとりすぎないよう素焼きのものを選ぶと良いかと思います。最初は味がないと感じるかもしれませんが、慣れると自然の味が楽しめてとてもおいしく感じます。
③ダークチョコレート
ダークチョコレートはお好きですか?チョコレートの原料であるカカオ豆にはポリフェノールが含まれています。そのポリフェノールはストレスホルモン「コルチゾール」の血中濃度を下げる働きをします。
甘いチョコレートは疲れたときに食べたくなりますし、幸せな気持ちにもなりますよね。それも良いのですが、たまにはカカオ70%以上のチョコレートを選ぶとストレスを和らげるのに役立ちますよ。
④緑茶
ほっと一息つきたいとき、何を飲むことが多いでしょうか。大きくコーヒー派とお茶派に分かれると思います。
コーヒーは香りもいいですし目も冴えるのですが、カフェインには体を冷やす効果とコルチゾールの分泌を促す作用があります。カフェインで体を無理して元気にしている状態なので、飲みすぎはあまりおすすめできません。
ほっと一息にはコーヒーの代わりに緑茶を取り入れるのがおすすめです。緑茶には「テアニン」という、リラックス効果やストレスを和らげるのに役立つうまみ成分が含まれているという研究結果が出ています。
緑茶はいれるお湯の温度によっても甘みや苦味の出方が変わるので、その違いを試してみるともっとお茶を飲むのが楽しくなるかもしれません。
参考:日経Gooday「お茶は「ストレス」「不眠」にも効果あり!緑茶パワーをフルに活かす“いれ方”とは?」
○まとめ
いかがでしたか?今回の内容を以下にまとめます。
○血糖値が上がることによって引き起こされる病気
血糖値を下げる作用のあるインスリンが作用しなくなることによって起きる糖尿病です。合併症としては、動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞、感染症、高血圧などの病気が挙げられます。
○ストレスによって血糖値が急上昇するメカニズム
メカニズム①:ストレスによって血糖値が上がるホルモンが分泌される
メカニズム②:ストレスによってインスリン抵抗性が強くなる
○血糖値が高めの方におすすめのストレス解消法
解消法①:気分転換する(環境を変える)
解消法②:休息
解消法③:運動
解消法④:食事を楽しむ
○ストレスを和らげる食べ物5つ
①バナナ
②ナッツ
③緑茶
④ダークチョコレート ストレス解消法やストレスを和らげる食べ物をうまく取り入れながら血糖値をうまくコントロールして、健康に毎日を過ごしていただければと思います。 i