
働き方改革ってよく聞く言葉だけど、イマイチわからない。今回はそんな悩みを抱えているあなたに、働き方改革の内容を簡単に解説致します!
また、背景や目的をより詳しく知りたい場合はこちらの記事に書きましたので合わせてどうぞ。
また、働き方改革では残業の上限に罰則をつけることが審議されています。しかしこの適用に教員は除外されています。なぜなのでしょうか。ここではその理由を解説します。一緒にみていきましょう。
Contents
そもそも働き方改革とは何か?
「働き方改革」とは、安倍内閣が目玉政策として掲げる政策で、日本の企業文化、ライフスタイル、労働自体に対する考え方の根底に着手する改革です。
その背景にあるのは現在の日本の構造的な危機に直面です。以下の3点です。
- 労働人口の減少
- 長時間労働
- 少子高齢化
これらの構造的問題の解決法として、働き方改革はスタート致しました。ではこの改革が目的として掲げる内容を見ていきましょう。
- 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
- 賃金引上げと労働生産性向上
- 罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
- 柔軟な働き方がしやすい環境整備
- 女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
- 病気の治療と仕事の両立
- 子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
- 雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
- 誰にでもチャンスのある教育環境の整備
- 高齢者の就業促進
- 外国人材の受入れ
どれも尤も、とうなずける内容ですね。働き方改革の背景は構造的な問題ですので、個人の努力などでどうにかなるものでもありません。政府主導で進めていくべき内容でしょう。
労働人口の減少は既に採用の現場に大きな影響を与えています。2017年の現在は空前の売り手市場。バブル期を超える有効求人倍率。
新卒の大学生を採用するのは、大企業でも苦労しています。採用のスタイルは従来の一括採用方式からすこしづつ変化しています。従来、転職者が使用する転職エージェントサービスを利用して就職活動をしている大学生も珍しくありません。
採用の現場に携わる者としての実感でも有りますが、就活ナビなどで「説明会をします」などと告知しても集まる数が年々減っているのです。
また、長時間労働問題は日本の多くの会社が抱える悩みでしょう。欧米では定時で帰り、自分の人生を楽しみながら仕事もこなすというイメージが有りますね。長時間労働は「勤勉な」日本人の特性であるように見えます。
しかし、長時間労働は日本の雇用の生んだ問題です。以下に詳しく記載しましたが、欧米の雇用スタイルと日本の雇用スタイルは全く異なるのです。
少子高齢化も深刻です。2060年には2.5人に1人が高齢者となることが予測されています。これらの問題を解決しなければ日本経済はジリ貧なのは明白でしょう。そこで働き方改革が考え出された、というわけですね。
これら、3つの背景を元に働き方改革はうまれました。この改革で実現しようとしている社会は素晴らしいと思います。
目的として掲げている内容はどれも尤もなものですが、これらは小手先の手段という印象が拭えません。
働き方改革の内容はよいが根本解決には疑問が残る
同一労働同一賃金や長時間労働対策は欧米を意識しています。欧米では職種別賃金が浸透しています。日本では新卒採用をするとき、職種を限定して採用する、ということは行いません。
「総合職」として採用し、様々な仕事を経験させて幹部を目指すということをおこないます。しかし、欧米型の雇用はこれとは異なります。新卒で一括採用をしません。「仕事能力はよくわからないけど、能力ありそうだ」というポテンシャル採用もありません。
ではどのようにして大学生は職を得るかというと、長期の企業インターンシップで社員並に働き、スキルを磨くのです。この期間はかなりやすい給料で働くことになり、スキルを磨きます。そこで得た仕事のスキルを元に就職先を探すのです。
欧米ではこういったスタイルになっています。また、一度ついた仕事を変わることは殆どありません。望んでも、受けてきた教育次第で、就業できる仕事はかなり限られます。高等教育を受けた人材は大学を卒業すると同時に部長クラスの仕事に就業しますし、経理の事務職を一生続ける人もいます。
賃金もほとんど上がりません。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/keizaiwp/wp-je92/wp-je92bun-3-3-4z.html
また、欧米では仕事に人を割り当てる、という考え方なので、空きポジションが出たら社内異動で賄う、ということを行いません。
そのポジションの仕事を遂行できる人材を外部からヘッドハンティングするなり、引っ張ってくるのです。もし十分なスキルがなければすぐに別の人材に変えられます。
基本的な発想は「仕事ありき」で「人をあてがう」というものです。そのため、仕事の仕方も「自分の仕事の範囲」が大変に明確で、「いいえ、それは私の仕事ではありません」ということが普通にあります。
このような背景があるので、「人によって賃金を決める」のではなく「仕事によって賃金を決める」という発想が馴染みます。そのため、パートタイム労働者でも、正社員の賃金の8割程度を確保しています。

この構造的な部分に目を向けず、「同一労働同一賃金」だけを導入しようとしてもうまくいかないことが予想されます。
また、長時間労働も同じです。欧米型雇用では一度雇用されると一生同じ仕事をするため、他人の仕事を手伝うという発想も生まれにくいし、他人より働いて成果を出すと認められ出世につながる、という発想もありません。
その為、時間になると定時退社し自分の人生を楽しむ、というワークライフスタイルが浸透し易いのです。日本の働き方ではこれはなかなか通用しにくいのは容易に想像できますね。
日本は「出世」という人参を目の前にぶら下げられ、一生働くことになります。この構造の元で、長時間労働が助長されるのです。」日本型雇用の生んだ「長時間労働」という二次的産物にのみ目を向けて、罰則付きの上限を設けても仕事の量は変わらず、働きにくい社会になるだけです。是非、深い部分に目を向けた議論を望みます。
働き方改革でも教員は適用除外されている
2017年3月28日にまとめられた「働き方改革実行計画」では、2019年4月1日の施行を見越して、年720時間、繁忙期は月100時間未満の罰則付きの残業時間規制を導入しようとしています。
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/01.pdf
しかし教員はこの規制から適用除外されています。ただでさえ、長時間労働になりがちな教員。なぜ働き方実行計画から適用除外になってしまったのでしょうか?その理由は法律に有りました。
教員の残業は出ない決まりになっている
従来から長時間労働が問題になっている教員ですが、教員の給与は法律で残業が出ないことが決まっています。これは、給特法(教員の給与を定めた法律)という昭和47年に施行された法律です。
この法律では、授業準備や部活動指導が残業可能な業務として規定されていないため、教員の働き方は際限無く伸びることが許される環境になっており、長時間労働が放置されています。
文科省が16年に行った調査では時間外勤務時間数を1ヶ月あたりに換算した
月 80 時間を超える割合が、小学校教員で 33.5%、中学校教員で 57.7%になってるとのこと。
月80時間というと厚生労働省が過労死の労災認定のラインとして定めている基準値です。小学校教員の約3割、中学校教員の約6割がこのラインに達しているということです。
実際、教育の現場では教員個人の働き方に大きく依存している現状が有ります。クラブ活動などはまさにそのよい例です。
授業準備や部活指導は残業扱いにならない
教員は残業代がでないことが法律で決まっています。しかし、残業代がない代わりに、毎月の基本給の4%に相当する「教職調整額」が支給されています。
これが残業代の代わり、とみなされています。しかし、この支払い根拠は1966年に行った教員の残業時間の調査です。当時教員の平均残業時間は約8時間でしたが、上でもみたように、80時間を超える残業をしている教員は小学校教員で3割、中学校教員で6割に達しています。
1960年代当時の10倍の時間外労働時間が恒常化しているにもかかわらず、制度のほうが追いついていない現状があるのです。
タイムカードなどで勤怠を管理している学校は1割ほどにとどまっています。終わりがないに等しい教員の仕事。授業以外の授業準備、部活動、親への対応、修学旅行準備、本当にエンドレスです。
働き方改革の適用除外にされているのは、給特法に原因があると言えそうです。
この部分を根底から変えなければ教員の働き方は変わらないでしょう。
まとめ
働き方改革の内容を簡単に解説致しました。この改革は本来の根本的な問題に目を向けず、小手先の手段で解決しようとしているように見えます。
残念ながら、このまま進めると日本の労働環境はいびつな形になるのでは、と危惧されます。
また教員は罰則付き時間外労働の上限規制から除外されていました。これには古めかしい法律が原因に有りました。教育の現場ではただでさえ長時間労働になり勝ちな働き方が横行しています。根本的な解決をするような議論が待ち望まれますね。