働き方

あなたにも訪れる介護離職。企業の取組を知り、賢く仕事と介護を両立させよう

介護は誰にでも訪れる問題。あなたにも突然訪れる可能性があります。人は得てして、「重要ではあるけれども、緊急ではないこと」に労力を使いません。油断していた矢先に介護離職・・ということにならないよう、準備しておきましょう。

介護離職を経営上の課題として捉え、働き方改革に取り組み始めている企業は増えています。もはや従来の滅私奉公的な働き方では人材を確保できなくなっているのです。まだまだ大丈夫というあなた、20代でも介護離職はあり得ます!この機会に仕事と介護の両立ができる働き方を探してみませんか?

介護離職の現実

働く人の4.5%が介護をしながら働いている

平成24年の総務省による就業構造基本調査によれば有業者数は6442万人。一方、離職せずに、働きながら介護をしている人は291万人。約4.5%です。驚くべき数字ではないでしょうか。人口構造が確実に変化していることを如実にあらわしていると言えます。

また、同調査において、年代別で介護をしながら働いている人口を見て見ると55歳から59歳までが最多です。

  • 40歳未満  :31万人
  • 40歳代   :53万人
  • 50歳~54歳:51万人
  • 55歳~59-歳:61万人

それ以下の年齢層では40歳以上から急増しています。40歳以上というと、まさに働き盛りの年齢層ですね。また、55歳から59歳という層は経営層や管理職層でもあることが多く、介護離職が経営に影響を与えるリスクが大きい層であることからも、日本社会が無視できない問題に直面していることがわかります。

参考資料:http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/pdf/kgaiyou.pdf

毎年約10万人が介護離職している

一方、離職をみて見ましょう。同調査によると、介護による離職は毎年約10万人で推移しています。2015年に安倍首相の掲げた「介護離職ゼロ」には程遠い数字であることが分かるでしょう。「介護施設を作って受け皿を」という政策を打ち出していますが、現状、多くの介護施設では職員の確保が問題になっています。

人手不足である社会背景に加えて、介護職員の待遇改善は進んでいない施設が多いと聞きます。そのような中で、介護施設を増やして受け皿を増やすということは本末転倒であり、今後も政策方面から介護離職を解消する見込みは薄いように見えます。

高収入でもホームレス!?

総務省就業構造基本調査によると、非正規雇用の方が離職に至るケースが多い傾向にあることがわかります。推定するに、年収が高く、介護サービスの費用負担が可能な方の場合は、離職にまで至らないのかもしれません。

しかし、高収入でも、状況が一変する例もあります。先日、女性自身の以下のような記事がありましたので紹介します。

参考資料:http://news.livedoor.com/article/detail/13143374/

上記の方は介護離職前の年収が1200万円あったそうですが、両親の介護がきっかけとなり、再就職。しかし業績悪化で賃金未払いが続き、ついに預貯金が底をついて、ホームレスになったといいます。(この方は現在、埼玉の団体職員として働かれているそうです)このような事態にまで至る例もあり、介護による離職は長期間の就業ブランクを生みやすく、なかなか復帰が困難である現状を示しています。

正社員で再就職した方は約5割

次に、離職に至ってしまった場合、再就職の進み具合を見てみます。

平成24年度厚生労働省から委託を受けた三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社によると以下のような現状があります。(離職前は正社員だった方2000人に調査している)

  • 介護離職の後、正社員で再就職した方は約5割にとどまる
  • 約2割5分の方は再就職していない

この数字をみると介護離職に至ってしまった場合、その後の職業人生への影響は甚大なものであると言えます。

離職しても精神的負担はむしろ増す傾向

同調査によると、離職後、精神面での負担が増した、と感じている方は6割を超えているようです。離職をしても精神面での負担は軽くなるどころか、重くなっている、という現状はおそらく、上に記載したような、将来に対する不安のようなものも多くふくまれているのではないか、と推測致します。

参考資料:http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/dl/h24_itakuchousa05.pdf

私は介護離職を経験しておりませんので、想像することしかできませんが、メンタルに与える影響は小さくないであろうと感じます。予期せぬことにより、キャリアが分断される精神的ダメージは介護される本人以上のものがあるでしょう。キャリアのブランクは再就職リスクになるということを考えると、大きな不安を感じることと思います。

再就職は困難、精神面での負担は増える傾向。どうすれば良いのでしょうか。

介護離職を防ぐ企業の取り組み

辞めずに休業できる。介護休業制度を知ろう

まず、会社の定める介護休業制度をフル活用し、仕事と介護を両立させることができないか、考えるのが第一でしょう。

国の制度では、「対象家族1人につき、要介護状態にいたるごとに1回、通算93日まで、介護休業を取得できる」とあります。これは、法律で定められた制度であり、制度を利用できる労働者は、勤務先の業種や規模に関わらず、原則として要介護状態の「対象家族」を介護する労働者が対象です。誰でも取得できる制度なのです。

参考資料:http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/ryouritsu04/dl/gaiyou.pdf

平成27年3月の東京都産業労働局雇用就業部による調査によると、就業規則に、介護休業制度について記載している企業は8割以上あります。つまり、申請をすれば利用できる可能性は高いです。しかし、その半面、社員の介護の可能性や実態、ニーズの把握はしっかりと把握できていない企業が6割。制度はあるが、力をいれて国の制度以上の取り組みを行っている企業は少数かもしれません。

参考資料:http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/chousa/shigotokaigo/

実際、93日で介護状態が改善するかというと現実、そうはいかないケースが大方でしょう。

連続して取得しないにしろ、介護は何年も続く場合があります。この制度は大変ありがたいものではありますが、この制度だけでは不十分な方も中にはおられ、離職に至る方は上記の制度では足りない場合が多いのでしょう。

テレワークは介護離職の救世主に

あなたは、テレワークという働き方をご存知でしょうか?

定義:「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語(一般社団法人テレワーク協会)

簡単にいうと、ICTを活用した在宅ワークを可能にする働き方です。2006年に国がテレワーク推進政策をスタート、日本でもじわじわと導入が進んできております。

以下の4社は平成28年11月に、総務省が発表した、テレワーク先駆者百選の中で特に優秀であるとする総務大臣賞の受賞企業です。

  • サイボウズ株式会社
  • 株式会社ブイキューブ
  • 明治安田生命保険相互会社
  • ヤフー株式会社

上記以外でもテレワークの制度が整っている企業、また実績も十分であり、テレワーク先駆者百選に選ばれた企業は沢山あります。

参考資料:http://www.soumu.go.jp/main_content/000409347.pdf

人口構造が大きく変わろうとしている今、人手不足はより深刻さを増しています。多くの企業では、採用すること、定着させることが課題になっていることと思います。新卒採用の記事でも書きましたが、労働市場は空前の売り手市場ですし、この傾向は続きます。

参考資料:http://kirrin.work/syukatsu-kaikin/

こういった社会背景を考えると、テレワークは時代が求める働き方といえるでしょう。あなたの会社にテレワークの制度がなく、介護と仕事の両立に困っている場合、人事部に問い合わせてみるのもよいかもしれません。テレワークの導入は企業にとってもメリットが大きいことから、案外実現は不可能ではないかもしれません。

あるいは、こういったサイトに登録するのもよいでしょう。再就職の探し方は様々です。賢く就職活動をして、仕事と介護を両立させる働き方を探りましょう。

まとめ

  • 働く人の4.5%が働きながら介護をしている
  • 毎年10万人が介護離職をしている
  • 介護離職をしても、精神的な負担は増す傾向に。その後の再就職もあまり進んでいない現状
  • 会社の介護休業制度を知ろう
  • それでも駄目なら、テレワークという働き方が浸透し始めている。制度を活用している企業と出会うのも一手である

介護は誰にでも降りかかる問題です。労働市場自体が縮小している今、企業側も働き方を見直す必要があります。その中で、すこしづつ、働き方を改革しようと取り組み始めている企業が増えており、介護離職問題への理解も進んできています。

もしあなたが介護をせざるを得なくなったら、会社の規則をまず確認し、テレワークなどの可能性を調べて見てはいかがでしょう。会社に問い合わせ、制度を作ってもらう、あるいは、テレワークで働ける会社を見つけるなど、行動はきっと結果を生みますよ。

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