インタビュー記事・ティール組織を目指す会社社長に質問したら驚きの仕事観が!その3

前回、前々回と伝えをしてきました、抱月工業の大久保社長に更にインタビューをしてきました。今回はカフェでリラックスした雰囲気の中で、コーヒーを飲みながら色々と語っていただきました。

まず抱月工業さんについてご紹介したいと思います。「ティール組織」についてはこちらの記事をご覧ください。

会社を簡単にご紹介いたしますと抱月工業さんは大阪府交野市にある、鉄のガス切断、プラズマ切断、レーザー切断、など、鉄の加工会社で、一見どこにでもある町工場のような会社さんです。

ところがこの会社さんが目指すところはとても先進的で、「ティール組織」を目指しています。前回前々回の記事については別途まとめています。今回は戦略について語っていただきました。

質問:前回もお聞きいたしました、抱月工業さんの戦略を詳しく教えてください。

「当社の強みは、地域に競合がいないこと、加工度が高いこと、人材の確保がうまくいっていることでしょうか。

鉄は重くて大きいため、船で運ぶんです。そのため、港に近い方が有利です。大阪では南港に大手の溶断屋さんが集まっています。ところが、大阪北部には当社しか溶断屋がありません。高槻、枚方、交野市などの地域を中心に顧客を開拓できています。

加工度に関しては、以前は1つの会社で1つの工程を担うことで分業をしていました。最近は一つの会社である程度の形、加工度を高めることが顧客にとって価値を生むようになってきています。当社は溶断から曲げや穴開け、ショットなどの表面処理までできます。

(ショットとは・・・)

細かい砂や鋼製・鋳鉄製の小球(ショット)などを金属の表面に吹きつけたり打ち当てたりして、表面を仕上げる加工法。砂吹き。サンド-ブラスト。ショット-ピーニング。

https://www.weblio.jp/content/ショットブラスト

このように工程の幅を広げるときに重要になるのが人の確保です。例えば溶断屋が曲げや穴開けなどの加工までこなすことは、技術的にはできなくはありません。

しかし人材の獲得が課題になって実現できない会社さんが多いと思います。幸い、当社は採用がうまくいき、人が定着しているので、顧客のニーズを満たすことができています。」

質問:なるほど。やはり良い組織づくりが必要なんですね。

「どの業界も人材不足は課題になっていると思いますが、特に私どもの業界では顕著です。
ですので、良い組織を作ろうと思いました。良い組織ができればアイデアが湧きます。

組織を強化すると戦略はそれに従うと考えていますので、戦略ありきではなく、組織ありきで戦略を作るという発想で組織を作っています。」

質問:今後の方向はどのようにお考えなんですか。

「生産技術を高めて機械を効率的に活用するため、オリジナルの設備を作ろうとしています。それから、中長期的な方向としては鉄にこだわる必要はなく、アルミやステンレスなども選択肢だと思っています。

3つ目は溶接などに加工の幅を広げたいと思っています。近い将来、溶接業は自動化が進むと考えています。そうすると参入しやすくなります。M&Aもやりやすい時代になっていますし。」

質問:事業が今後も広がりそうですね。となると、やはり組織を今まで以上に強くする必要がありますね。では、現在目指しているティール組織のことについて教えてください。

「ティール組織の大切な概念の一つに、ホールネスというものがあります。これは全体に自分が溶け込んでいるような感覚のことを指しています。」

ティール組織の概念が出てきました。ティール組織の重要な要素である、「ホールネス」について少し解説をしておきます。

フレデリックラルー氏の著作 ティール組織ティール組織238ページより

なぜ仕事に行く時には自分らしさの大部分を家に置いていくのだろう、それは従業員も組織も違いを恐れているからだ、まず組織側は社員がありのままの姿、(気分や気まぐれ、週末用の服装までを含めて)を職場に持ち込んでしまうと事態がすぐに混乱し収拾不能に陥ることを恐れている。

軍隊は昔から兵士達に、自分はいつでも交代可能なのだと思わせておいた方が統制しやすいことを知っている。それと同じである。

一方、従業員の側はありのままの姿をさらけ出して職場に現れると非難されるかバカにされるか奇妙で場違いな人だとの印象を周りに与えかねないことを恐れている。

そこで仕事用の仮面の下に自らを隠しておく方がはるかに安全だと考える。世界中の古くからの教えは深いレベルから、この点について論じている。

人は心底では全員がお互いに深く結びついていて、全体の一部であるにも関わらず、それを忘れてしまっているというのだ。

皆バラバラに生まれ育っていくうちに自分たちの深いありのままの姿からも自分を取り巻く人々や生活からも切り離されたと感じるようになる。

これらの教えによると、人生における最も深い使命感は自分自身の中の、そして外部世界との繋がりを通じてホールにスを取り戻せと要求している。

つまり、ホールネス(全体性ともいう)とは、外部にたいして自分のありのままの姿をさらけ出しお互いを受け入れ、受け入れられるような関係性を築き上げることによって成し遂げられるものであると理解できると思います。

職場において、このホールネスという概念を築き上げるのは、日本の社会においては、チャレンジングな取り組みであることは間違いないでしょう。

しかしインタビュアーの私自身、会社員としての生活が20年近くに及び、常に違和感を感じ続けていたことがあります。それは「なぜこんなにも我慢して生きなければいけないんだろう」というとても素朴な疑問です。ここでいう、我慢とは実にプリミティブなもので、

「毎日電車で通う」

「自分の上に常に他人がいる」

「自我を押し殺す」

などです。大学を卒業して、定年で60歳で退職するまでに約40年間あります、この40年間の間、自我を殺して過ごすということはある意味自分にウソをついているのと同じであると思います。

抱月工業の大久保社長の大切な価値観の一つに、「仕事は楽しくあるべきである」というものがあります。これは見事に仕事の本質を突いていると思います。

後ほどインタビューの中で、「楽しい」という概念を大久保社長が本当に大切にされてるということが出てきます。質問を続けます。

質問:なるほど。現在社員が本音で話せるような雰囲気はありますか?

残念ながらそれはまだありません。社長に対して言ってくる社員と全く言わない社員は分かれています。よく言ってくれるのは3人くらい言わない社員は2人くらいかなと思ってます。

質問:ありがとうございます、チームリーダー以外とのコミュニケーションはどうでしょう

「やはりとても大事だと思います。偉そうにならないように気をつけています。例えるならば、友達のように接することが大事だと考えています。」

質問:接する時に気をつけていることはありますか?

「そうですね、お金お金、あるいは利益売上などとあまり言わないようにしています。これをすると、目先の改善に繋がってしまいます一方で、目標を立てるようにしています。達成できなくてもペナルティーはありません。達成できても直接的な報酬はありません。全社の利益を出せば全員の声が増えるという仕組みを作っています。」

質問:なるほど、いいですね、しかし一方で、利益が出る部門と出ない部門があります。ここについてはどうでしょうか?

「それはどうしてもついて回る問題です。ただ、利益が出る部門、出ない部門の異動をすれば解決できる問題だと思っています。

私は社員のモチベーションは楽しいということが最も大事なのではないかと考えています。例えば当社では改善提案をすると金一封が出る仕組みがあります。

皆さんモチベーション高く頑張っていただいています。賞品や賞金も用意をしております。そのためゲーム感覚で楽しんで頂いているような感じです。

前回、お話ししたチームリーダーをくじ引きで決めるというのも、その一つです。

組織から楽しさが失われてしまうと、大事な価値観を失ってしまうことになりますので、楽しさはとても大事にしている考えの一つです。」

なんと抱月工業さんは管理職がおらず、チームリーダーをくじ引きで決める、というとてもユニークなリーダーの選抜方式をとっています。

質問:大久保さんの考える「楽しい」ということの意味をもう少し詳細に教えてください。

「楽しいというのは和気あいあいという意味だけではありません。

商品やサービスを通じて自分達が創造した物で周りの人達をワクワクと感じてもらえる様な仕事に就けて、ある程度自由に出来る環境を整える。

そうすると、社員は必然とイキイキと楽しく働けるのかなと思います」

遊ぶ鉄工所ヒルトップ株式会社山本昌作氏の著作によれば「仕事の楽しさは知的作業の中にある」といいます。

41ページ

図面を見て、どの機械を使うのか、材料は何を使うか、敷板は何ミリか、どの向きに取り付けるのか、刃物は何を使うのかを考えるプロセスこそ、人間らしく人間がやるべき仕事です。

しかし山本山本精工が請け負っていた自動車部品の量産には人間がやるべき知的作業は残されていませんでした、言われた通りにただ削るだけ。量産ものに知的作業はありません。

全く楽しくない、そこで私は楽しくなければ仕事じゃないという思いから、思い切って売上の8割を占めていた自動車部品の仕事をやめ、知的作業の多い、単品モノ主体に切り替えたのです。

なるほど、私も仕事をしていて楽しくない仕事はなるべく受けないようにしています。それどころか楽しくないという理由だけでその作業をやめようとさえすることもあります。

知的作業は人間のモチベーションを大きく左右する要因なのかもしれません。

先程の改善提案の金一封のことですが、グループ戦では優勝したら全員1万円、個人戦ではダイソンのヒーターや掃除機など商品も用意をしており、とても豪華だと思っています。

ただ、社員はゲーム感覚を重視していて、勝手皆で飲みに行くんだというようなノリでやっているのはところがあります。

組織を強化すると、ルールや決まりが増え、アイデアが出ないのではないかと考えています。ですからあまりガチガチの会社にしたいとはおもっていません。」

なるほど、社長のお考えがとてもよく理解できました。

まとめ

会社運営というものを私はやったことがありませんが、おそらくとても難しいものだと思います。なにしろ社員にモチベーションを高く働いてもらうということをし続けないと社員は自らやる気を出して働くということができないでしょう。

人間のモチベーション、行動の本質をよく理解して、うまく舵を取るということが会社経営にはとても重要なのだと思います。

多くの会社の経営者は優れた戦略があって、優れた社員がいれば会社はゴーイングコンサーンを実現できると考えているのではないかと思います。

大久保社長の考え方に触れて、私がすごく衝撃に思ったのが戦略は組織に従うということです。優れた組織があれば、戦略は実現できる。学問的には真逆のことを多くのビジネススクールでは教えるていると思います。

しかし、大久保社長と話していて、「優れた組織」のイメージができたような気がしました

まだまだ道半ばだ、とご自身はおっしゃっていますが、大久保社長の考えるティール組織が実現する日は案外もうそこまで来ているのかもしれません。

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