
国がメンタルヘルスケアについての対策に取り組みはじめて30年ほど、日本で企業の社員に対する健康管理への取り組みが本格化しはじめたのは、ここ10年~15年というところでしょうか。
うつ病についてメディアが取り上げる機会が増えたり、有名人が闘病を告白したりしたことで、認知度は上がっていると思います。道行く人に「うつ病って知ってますか」と聞けばほとんどの人が「知っている」と答えるでしょう。
でも「憂鬱な気分が続いたり眠れなくなったりするんでしょ。がんばれって言っちゃいけないんだよね。」程度の人も多いのではないでしょうか。
そんな世間の「なんとなく」の認識の中、うつ病を抱えながらも様々に現れる症状に対応しながら日々の仕事に励んでいる方の大変さは相当なものだと思います。
うつの症状は状況を選ばず現れますが、ストレスのかかる仕事中はスイッチが多く隠れている時間になります。ここでは仕事中のうつ症状との付き合い方をいくつかご紹介しますので、うつを抱えながら仕事をしている方のヒントに少しでもなれば幸いです。
ライター:中野
Contents
どんな症状が現れる?
仕事中に出るうつ病の症状は様々です。
- 思考停止になる
- コピーの枚数など、簡単なことでも決められない
- 強い睡魔に襲われて起きていられない
- 涙が止まらない
- 息苦しさ、胸苦しさにさいなまれて動けない
- 人と話せなくなり、仲間とコミュニケーションが取れない
- 強い焦燥感でいてもたってもいられない
うつ病の軽重、立場、仕事の内容、仲間との関係性などによって、仕事中に現れる症状は様々です。
症状によっては、周りに心配をかけたり、びっくりさせてしまうこともありますので職場にはうつ症状があることを伝えておいた方がいいでしょう。
何より、職場に隠していることで、症状を取り繕うための嘘が必要になり、その嘘のつじつまを合わせる為に頭を悩ませることになり、ただでさえ辛いのにさらに苦しい状況に自分を追いやることに繋がりかねません。
- どういう症状が出るか
- どう接してもらいたいか
など一緒に仕事をする人たちに伝えてお互いの「こうして欲しい」という部分の認識を合わせておくことで、より仕事がしやすい環境が作れると思います。
ここはちょっとがんばりどころですが、後がラクです。
症状と付き合いながら仕事をする
うつ病を抱えながら仕事をしていると、どうしても仕事中に症状が出てしまうことがあると思います。そんな時に試してみて欲しいことをこれからご紹介しますが、ポイントとしては、以下の2点です。
- 出た症状から意識を外す
- 逃げ道を用意すること
といったところでしょうか。ではすぐにできる具体的な方法についてみていきます。
1)利き手と逆の手で歯磨き
その場から離れることが出来るのであれば、席を立って少し体を動かしましょう。飲み物を買いに、シュレッダーをかけに、会社の周りをぐるっと一周でもなんでもいいです。
冷たい水で顔を洗うことも良いですが、おすすめしたいのは「利き手と逆の手で歯磨き」です。
これが難なく出来る人はほとんどいないと思います。体の動かし方に集中しないと上手に磨けないので、症状から意識を離すきっかけにすることが出来ます。
2)深呼吸、息を吐く回数を数える
仕事中に動けなくなってしまったり、会議や研修などで席を離れることが出来ないこともありますよね。そういう場合は、呼吸をうまく使いましょう。
症状が出てきたなと感じたら、まずは深呼吸をします。そして、ゆっくりと呼吸をしながら「吐く息」を数えます。はじめは呼吸が速くなっていることもありますが、なるべく長く静かに息を吐くとだんだんと呼吸がゆっくりになります。
体の構造上、勝手に吸えるようになっていますので、自然に息が入ってきたらまたゆっくりと吐くを繰り返します。息を吐ききる必要はありません。
全部吐ききろうとすると体に力が入ってしまうので、自然に止まるまでゆっくり吐きます。
3)事実に目を向ける
劣等感にさいなまれたり否定的な考えに飲み込まれて抜け出せなくなってしまうのもうつ病の症状です。
「何にも仕事が出来なかった」
冷静に、それまで実際にこなした仕事を挙げてみてください。量は少ないかも知れませんが、仕事をしたという事実が見えてくると思います。
「さっきのミスでどうしようもない奴だと思われた」
ミスをしたことは事実ですが、相手は「すぐに対応できたから良かった」と思っているかもしれません。相手がどう思ったかは自分ではわかりませんし、相手の気持ちや考えはその人のもので、こちらから想像したところで自分の事実にはなりえません。
何かのきっかけで反射的にマイナスの考えに支配されてしまうことはうつ病では仕方のないことです。これを自動思考といいます。こちらのサイトの説明がわかりやすいです。こちらは認知行動療法についての記載ですが、ヒントが満載です。
これは訓練をしない状態でいると、マイナス思考に支配されるのは仕方のないことです。風邪を引いたら鼻水が出るのと同じくらいのイメージです。
しかし、マイナス思考が自動思考であると理解することが大切です。
そうなって、どう受け流していこうかという時に、「実際に起こっている事=事実」に目を向けてなるべく客観的な視点にシフトすることがヒントになると思います。
ちなみに認知行動療法はうつ病に代表される精神疾患には効果が高く、広く使われる療法の一つです。
まず、入り口としては自動思考=認知のゆがみを直すことから始めます。時間はかかりますが、薬を使用しないので根本治療にはよい方法だとおもいます。
4)香りを使う
匂いを感じる嗅神経は脳から直接鼻に来ており、本能や記憶、感情といった部分と密接なかかわりを持つと言われています。
アロマセラピーでうつ症状によく使われるオレンジ・スイート、ベルガモット、サンダルウッドなどの精油の中で心地よいと感じるものをハンカチなどに数滴落としておき、辛さを感じた時に香りを嗅ぎます。
アロマ以外でもお香や香水などアイテムは色々ありますので気分が落ち着く香りがあれば、使えると思います。匂いの感じ方は人によって様々ですので、仕事中に使う場合は周りへの配慮を忘れずに、上手に使いましょう。
参考:http://www.sbfoods.co.jp/herbs/back/200806/aroma.html
ハーブティもよいですね。
例えば不安によいとされているのは以下が代表的です。
他にもたくさんの種類がありますが、有名なのは上記の二つでしょうか。寝る前などにお茶にして飲むと安眠できます。私もたまに飲んでいますが、効果ありますよ!
ちなみにカモミールの外部リンクは広告ですが、よい商品だと思います。ネットでの評判も悪くないので掲載してみました。興味ありましたらのぞいてみてくださいね。
まとめ
- うつ病への認知度は上がっているが理解は追いついていないことも
- 出来れば仕事仲間との認識合わせはしておきましょう
- 症状と付き合いながら仕事をする為のヒントを4つ紹介
辛いときは、休みを取ったり早退することも必要です。その為にも職場の理解があるといいのですが、それが無理な場合はあらかじめ調子が悪いときの説明をいくつか用意しておくと安心です。
うつ病を発症する人の性格的傾向として、正義感が強い、完璧主義、几帳面などが挙げられます。また、失敗や挫折の経験がないという人もその中に入るようです。
ちゃんとしなくてはいけない場面はありますが、ずっとちゃんとしていなければならないことはありません。うつ病を通して得られる経験は、その後の人生の糧になるものだと思います。ここで紹介した内容が仕事中の辛さを受け流すヒントになれば幸いです。