
あなたの仕事相手の中に、うつ病の方はいますか?この前まで頼りにしていた仕事相手が、急に遅刻が増えたり、コミュニケーションがとり辛くなったりして戸惑った経験はありませんか?
仕事に限らず、相手があることは「お互い様」が基本です。でも、カゼや胃腸炎なら「あ~辛いよね~ゆっくり休んで」とスッと共感できますが、うつ病となるとこれがなかなか難しいものです。
ここでは、うつ病・うつ症状がある仕事相手との接し方について、心がけたいことをいくつかご紹介したいと思います。
ライター:中野
Contents
うつ病になるとどうなる?
「うつ病」という病気の認知度は上がっていますが、どうなってしまうのかを理解している人は多くはないのではないでしょうか。
まずは、その仕事相手がどんな状態にあるのかを知り、接し方を考える必要があります。
では、アメリカ精神医学会によって出版された、「精神障害の診断と統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)別名「DSM」という書籍があります。この書籍は国際的な診断基準になっているものです。
これを参考に説明いたします。ちなみに現在は第5版(IV)が最新版です。
診断基準(DSM-IVを要約)
外からみたら少しわかりづらいかもしれませんが、仕事相手に以下の症状が複数認められるのならば、うつ病を疑ってもよいのかもしれません。
以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病気以前の機能からの変化を起こしている。
これらの症状のうち少なくともひとつは、(1)抑うつ気分、あるいは(2)興味または喜びの喪失である。
(1)抑うつ気分
(2)興味または喜びの著しい減退
(3)体重減少(or 増加)、または食欲の減退(or 増加)
(4)不眠(or 睡眠過多)
(5)焦燥(今にも何かしでかしそう)または制止(思考や言動が遅くなる)
(6)易疲労性や気力の減退
(7)無価値感や過剰または不適切な罪責感
(8)集中力の減退や決断困難
(9)希死念慮:「死にたい、消えてしまいたい」投薬(または薬物使用)による生理作用や他の身体疾患によるものではない。
参考:http://hagamen.jp/case/depression/
参考:http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
本人が感じている症状
うつ病になると本当にさまざまな症状が現れます。
気持ちへの影響・・・憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、強い不安感、イライラ、嬉しい・楽しい気持ちが感じられない
思考への影響・・・何もやりたくない、集中できない、細かいことでも気になる、何でも自分のせいに感じる(罪責感)、マイナス思考、死にたくなる
体への影響・・・眠れない(または起きていられない)、食欲がない(またはありすぎる)、だるさ、疲れやすい、頭痛、めまい、肩こり、動悸、胃腸の不調
参考:http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
周囲から分かる症状
本人から報告が無くてもこんな状態が見られる場合、その仕事相手はうつ病に苦しんでいるかもしれません。
うつ病に限らず、何かしらつらい状況にある可能性は高いと思いますのでさりげなく声をかけたり、場合によっては受診を勧めることも対応の一つになります。
- 表情に変化がない
- 目に生気がない
- 急に泣きだすなど涙もろい
- 急に怒りだす(キレる)
- 反応が遅い
- 簡単なことでも決められない
- 急に痩せる(または太る)
- 頻繁に居眠りをする
- お酒の量が増える
- そわそわと落ち着きがない
- 「自分のせい」という発言が目立つ
- 注意力が散漫でミスが多い
参考:http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
仕事相手がうつ病、心がけたい4つのこと
普通、目の前に知らないものが現れると、怖いので拒否反応が出ます。まずは、うつ病のことを知って、その仕事相手がどんな状況下に置かれているのかを理解することで、拒否反応を和らげましょう。
なんだか分からないまま、接しているとイライラしたり、酷く怒ってしまったりとこちらの精神状態も悪くなってしまいます。全て共感することはできないと思いますが、症状を理解して理性的な接し方ができるような心がけが必要です。
1)「がんばれ」と言わない
うつ病になる人の性格的傾向として、几帳面・まじめ・責任感が強い・人あたりが良いなどがあり、周囲の評価も高い人が多いといわれています。周りを考えるあまりに自分を抑えることが多かったり、人に迷惑をかけないようにや完璧を求めてがんばってがんばってがんばった末に自分でも気が付かないうちにバランスを崩してしまうことが考えられます。
さらにうつ病を発症しても「がんばって仕事をこなさなきゃ」とがんばり続けようとしてしまいます。すでに本人ががんばり続けていることに対してさらに「がんばれ」は、大切な仕事相手を追い込んでしまう声かけになってしまいます。
ただ、励ましてはいけないということではありません。「仕事はサポートするからがんばってのんびりしてね」「回復してからがんばってもらえば大丈夫だからね」など、治療や休息に向けた励ましの声かけはして大丈夫です。うつ病を抱えていても安心して仕事ができるような声かけを心がけましょう。
2)治った人を引き合いに出して励まさない
「私の友達もうつ病で自殺未遂したりしてたけど治ったから大丈夫だよ」
「うちの嫁もうつ病で大変だったけど旅行に出したらケロッとして帰ってきたよ。しばらく旅行にでも行って来たら?」
など、励まそうと思って治った人のエピソードを引き合いに出す人がいますが、これは止めたほうがいいでしょう。
早く治って欲しいという気持ちからのことだとは思いますが、このような接し方はかえって負担を増やすことに繋がります。
うつ病は人によって症状も治療にかかる時間も違うので、他の人を引き合いに出すことはあまり意味がありません。その人なりの治療経過がありますし、他の人のエピソードが不安の種になる可能性もあるので、励ますのであればその人の治療に向かえるような声かけをしましょう。
3)そっとしておく
一緒にがんばっている仕事相手が病気になったとなれば、色々とかまいたくなるものです。
外出に誘ってみたり、ああしたらいい、こうしたら治った、治るように毎日祈ってるからねなどのアドバイスや励ましは、かえってストレスになってしまいます。
無責任な忠告やアドバイスは、混乱をまねいたり、それができない自分を責めてしまったり、朝まで考え込んでしまったりとマイナスに働く事の方が多いでしょう。そっとしておいてあげることが大切です。
直接的にあれやこれやと世話を焼くのではなく、その人の負担が多くならないように配慮したり、仕事環境を整えることを考えて、少し離れて見守る姿勢でいられると良いです。
「調子はどう?」と様子を聞くのも週に1度あれば十分です。調子が悪いと言われてもアドバイスは必要ありません。「あぁ今は調子が悪いんだね。教えてくれてありがとう。」と共感するだけで大丈夫です。
あとは通常のコミュニケーションの中で、焦っていたりがんばりすぎている様子が見られたら、それを一言伝えて、ゆっくりで良いことを認識してもらいましょう。
「かかわらない」のと「そっとしておく」のは全く異なります。仕事をして、仲間とコミュニケーションがあることで社会に参加しているという実感が持てることはとても大切なことです。そっと見守って周りからサポートするような接し方が大切です。
4)気にしすぎない
仕事相手がうつ病になったということで、仕事内容を検討したり、接し方に心を砕いたりと色々と気を配って疲れてしまうこともあるかと思います。
こちらが気を使いすぎて無理な対応をしてしまい、お互いの仕事環境に歪みがでてしまったりすることもあります。
仕事内容や会社の状態により、うつ病を抱えながらではできないこともあります。自殺も視野に入れて考えなければいけない病気なので、対応にためらいが出ることも多いと思いますが、気にしすぎては仕事の現場自体が立ち行かなくなってしまいます。
対応できること、できないこと、こうしてもらえると助かることなどの線引きをお互いにその都度しっかりと話し合っておくことが大切です。できることなら、職場の人が受診の際に同行して、医師とも話しておくとお互いにストレス無く仕事環境を整えられると思います。
周りが気にしすぎて職場がギクシャクしてしまうのは、誰の幸せにも繋がりません。病気は病気で仕方の無いこと、気にしすぎて同調してしまうことが無いように、冷静に温かく対応することを心がけましょう。
まとめ
さて、以下についてみてきました。
- うつ病はどんな症状が現れるか
- 仕事相手がうつ病の場合、気を付けるポイント
- 「がんばれ」といわない
- 治った人を引き合いに出して励まさない
- そっとしておく
- 気にしすぎない
うつ病は本人はもちろんとてもつらい経験をしますが、家族・仕事相手・友人など周囲の人にも少なからず影響があります。一番影響を受けるのは家族ですが、仕事の現場への影響も大きなものになります。
まずは、冷静に状況を把握することが大切です。仕事を進める上で、回復の度合いに合わせて、お互いに負担が一番少ない環境を検討することが仕事相手が回復するまでの支えにもなると思います。
普段の接し方としては、うつ病だからと特別な声かけは必要ありません。叱咤激励は厳禁ですが、それ以外は普通で大丈夫です。必要以上にかまったりせず、温かく見守る目を大切にしてください。以上、「うつ病の仕事相手との接し方、心がけたい4つのこと」でした。